
不登校のお子さんを持つご家庭では、さまざまな葛藤があることと思います。特にパートナーが厳しく子どもを叱る場面に直面すると、どのように対応すればよいのか悩む方も多いでしょう。真剣に向き合ってくれることを尊重したいけど、子どもを深く追い込んでしまっているのでは?と心配になる方もいらっしゃると思います。
今回は社会福祉士としての具体的根拠に基づいて、実際に子どものためにできることや配慮すべき点をご紹介します。お子さん個人への支援だけでなく、家庭全体の安定を目指す内容を意図しています。
“その時の”叱責の影響を理解した上でパートナーに同調しない
不登校の背景には、いじめや学業のプレッシャー、家庭内トラブル、精神的な負担など、さまざまな要因が絡んでいますが、パートナーが叱っている内容の本意がそこにあるとは限りません。他に理由があり、叱るうちに“不登校”というより大きな問題を持ち出して厳しく叱責している可能性があります。そのような本題のブレは親子の信頼関係をも損なうリスクがあります。
心理学的研究では、厳しい叱責を受けた子どもは、ストレスホルモンの増加、自己評価の低下、過剰な不安 などの影響を受けやすいことが示されています(例: P. Shonkoff et al., 2012)。
話し合いのポイント
- パートナーがどのような思いで叱ったのかを丁寧に聞き、クールダウンを図る
- お互いに感情的にならず、冷静に話す場を設ける
- 落ち着いた後、子どもにどう接するべきか、夫婦間だけで意見交換する
パートナーが叱り役の時にあなたができること
家庭内でパートナーが叱る役割を担っている場合、あなたが「守り役」としてお子さんにとっての安心基地になることが大切です。このバランスを保つことで、叱責の負担を軽減し、子どもの心理的な安全を確保できます。
実践のヒント
- パートナーが叱り、かつクールダウンした後は必ず子どもに寄り添い、感情を受け止める時間を持つ。
- 「私たちはいつでも味方だよ」と安心感を伝える言葉をかける。
- 子どもの良い面や小さな努力を見つけて、積極的に褒める。
パートナーが厳しく叱る背景には、「子どもの将来を思う気持ち」や「親としての責任感」がある場合が多いです。その意図を否定せず、感情の着地を最短の目標とすることが重要です。パートナーが叱っている内容がいわゆる正論であることの方が多くあると思いますが、厳しく叱責することに持続的なメリットはなく、さらに両親共に敵対するような立場になることは避けるべきです。パートナーがクールダウンしていない時に子どもに優しい言葉をかけ始めると、夫婦間の対立のような構図になりかねないため、まずは大人側の安全なクールダウンが必要になります。
お子さんの心の声に耳を傾ける
厳しい叱責が子どもに与える影響を軽減するには、まず子どもの気持ちを理解することが必要です。不登校の子どもは、自分の気持ちを言葉にするのが難しい場合がありますが、親が寄り添う姿勢を見せることで、少しずつ心を開く可能性があります。
具体的な声かけの例
- 日常の中で共通の活動(料理やゲームなど)を通じて自然に対話を深める。
- 不登校について子どもの方から触れてきた場合、「どうして学校に行きたくないのか」を直接問うのではなく、「どんなことがつらいと感じる?」と質問を柔らかくする。
- お子さんの感情を否定せず、「それはつらかったね」と感情的な返答や共感を示す。
家庭内の安心感を大切にする
第二の居場所がない不登校のお子さんにとって、家庭は唯一の安心できる場所であるべきです。親同士の不和や過度の叱責が続くと、家庭全体がストレスの場となりかねません。
家庭環境を整える工夫
- 毎日少しでも笑顔で会話する時間をつくる。
- 子どもの行動を一方的に評価せず、小さな成長を見つけて褒める。
- 必要に応じて、専門家の助言を受ける。
専門家のサポートを活用する
不登校は家庭内だけで解決しようとせず、必要に応じて学校や福祉機関、カウンセリングサービスを活用しましょう。社会福祉士や心理士、学校の相談員は、中立的な視点から具体的な支援策を提案できます。
サポートの具体例
- 地域の不登校支援団体や居場所活動への参加
- カウンセラーや臨床心理士との相談
- 学校と連携した個別対応プランの策定
あなた自身を大切にすることも忘れずに
親として子どもを支える中で、あなた自身も多くのストレスを抱えているかもしれません。適切にストレスを解消し、心の余裕を持つことが、子どもやパートナーとの良好な関係につながります。
自分をケアするためのヒント
- 信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう。
- 趣味やリラックスできる時間を意識的に確保する。
- 必要に応じて親向けのカウンセリングを受ける。
おわりに
不登校は家族全員が向き合う課題ですが、厳しい叱責は解決策になりません。お子さんとパートナー、そしてあなた自身の心を大切にしながら、少しずつ前進していく道を見つけてください。
一人で悩まず、専門家や地域の支援を上手に活用していきましょう。