社会福祉士が伝えたい、冬休み明けからの不登校:理由と対応できること

楽しい年末年始や冬休みが明けると、お子さんが学校へ行きたがらなくなるケースがあります。このような状況で、親としてどのように声をかけたり、対応したりすればよいのか悩むことも多いでしょう。今回は社会福祉士の視点から、冬休み明けに不登校が始まる主な理由・メカニズムと、適切に対応するための具体的な手段についてお伝えします。

目次

冬休み明けに不登校が始まる主な理由

休暇と学校生活のギャップから生じる不安

長い休みの間に学校から離れたことで、学校生活へ戻ることが難しくなるお子さんもいます。特に、過去に学校で人間関係のトラブルや学業のプレッシャーなど、ネガティブな思いを経験している場合、楽しかった冬休みの記憶と比べてしまい、学校に戻ることへの不安が大きくなる傾向があります。

関連研究: 心理学的研究では、学校がストレス源となる子どもにとって、休み明けは再適応への負担が増すタイミングであることが示されています(M. Lazarus & R. Folkman, 1984)。

生活リズムの乱れ

冬休み中の生活リズムの変化も、不登校の引き金になることがあります。年末年始期間は年越しイベントや行事など、親世代からしても”無礼講”的な空気になることはあります。年始を過ぎた冬休み期間も夜更かしや朝寝坊の習慣が続いてしまうと、いきなり学校の時間に合わせた生活に戻るのが難しくなります。

孤立感の増大

冬休み中にずっと家に居て、友達との接触も少なかった場合、学校での孤立感が強まることがあります。特に冬休み前から人間関係の課題を抱えていたお子さんは、新学期を始めることへの心理的な壁を高く・強く感じるかもしれません。

冬の朝の寒さや空気感

外的な要因として、冬休み明けの1月中旬ごろは1年のうちでも最も寒い時期に当たります。あたたかい暖房の効いた家から、早朝の時間に外に出て、自らの足で学校へ向かうというギャップは大人でも辛く感じるでしょう。このような環境的一因も総合的に作用し、不登校のきっかけにつながることがあります。

親としてできる具体的な対応方法

お子さんの気持ちを受け止める

まずは、学校へ行きたがらない理由をお子さんから聞き出すことが重要です。しかし無理に話させるのではなく、お子さんが話したいと思うタイミングを待つ姿勢が大切です。

対話のポイント

  • 「学校の何が嫌なの?」ではなく、「何か困っていることがある?」と優しく尋ねる。
  • 話し始めたらお子さんの話を遮らず、最後まで聞く。
  • 「それはつらかったね」「頑張ってたんだね」と共感を示す。

生活リズムを整える

規則正しい生活リズムは、心身の安定に繋がります。特に冬休み明けにも生活リズムが乱れたまま定着している場合は、朝起きる時間や食事の時間を徐々に学校生活に合わせていくことが必要です。

実践のヒント

  • 就寝時間を毎日10〜15分ずつ早める。
  • 朝日を浴びる習慣をつける。
  • 朝ごはんを一緒に食べる。

小さな目標を立てる

不登校からの復帰は、個人個人によりハードルの高さが変わります。その中でも多くの人に当てはまるのは、「小さなステップを積み重ねることが効果的」ということです。例えばいきなり「学校に行きなさい」と求めることはせず、 次のような段階を設けましょう。

  1. 毎朝決まった時間に起きるよう促す。
  2. 学校に行く準備だけをしてみる。
  3. 学校の校門まで行ってみる。

学校や専門機関と連携する

不登校の対応は、家庭だけで抱え込むのではなく、学校や地域の専門機関と協力することが大切です。

相談先の例:

  • 学校の担任の先生やスクールカウンセラー
  • 地域の教育支援センター
  • 福祉機関や児童相談所

お子さんへの接し方で注意すべき点

厳しい叱責は逆効果

「学校に行かないとダメ」「甘えているだけ」「他の子だって頑張って行ってるんだよ」といった厳しい言葉は、お子さんの不安を増幅させる可能性があります。叱責ではなく、辛抱強く共感と支援の姿勢を持つことが重要です。

「守り役」として安心感を与える

お子さんが学校に行けない間、家庭が「安心基地」となることが重要です。親が寄り添い、「ここにいても大丈夫なんだよ」という安心感を伝えることで、心の安定をサポートし、結果的に外へ飛び出す精神的仕度に繋がります。

親自身のケアも忘れずに

不登校のお子さんに向き合うことは、親にとっても大きなストレスとなります。怒りたいのに怒れない。理想があるのに実現できない。我が子は自らの子どもであると同時に、一人の人間であるため、思う通りに扱うことはできません。そのため、親自身も自分を大切にし、適切な方法でストレスを解消し、心の健康を保つことがとても重要です。

おすすめのストレス解消方法

  • 信頼できる人に話を聞いてもらう。
  • 一人で過ごす時間を確保する。
  • 好きなイベントや推し活などの余暇を充実させる。
  • 必要であれば専門家に相談する。

おわりに

冬休み明けから始まる不登校は、さまざまな理由が組み合わされるかたちになっています。大切なのは、親が理解し、お子さんに寄り添いながら解決への道を模索することです。ご両親だけで、あるいは一人で抱え込まず、学校や専門機関と連携しながら、お子さんのペースに合わせた対応を進めていきましょう。

目次